中村仲蔵

銀座の東劇でシネマ落語「落語研究会・昭和の名人 弐」を見てきた。志ん朝も馬生も圓生もそれはもう面白かったのですが、今日は最後に登場した八代目正蔵の「中村仲蔵」の印象が強すぎて強すぎて!いまだ興奮冷めやらず!

以前、「歌舞伎はなぜか自ら見に行こうとは思わないんですよー」と話したら、もんさんに「落語の『中村仲蔵』を聞いたら歌舞伎見たくなりますよ」と言われたことがあった。それが今日、「なるほどーーー!これは、忠臣蔵五段目の定九郎を見ない訳にはいかないじゃないかーーー!かっこいいっ!仲蔵かっこいいっ!」と大納得したのだった。

苦労して名題にまで上り詰めた中村仲蔵。中村座での忠臣蔵ではどんな大役がもらえるかと期待していたら、与えられたのは忠臣蔵五段目の端役、定九郎。お客が弁当を食べる弁当幕と呼ばれる場面に登場する役。そんな配役に落ち込む仲蔵に女房のお岸は「おまえさんにしか出来ない定九郎を演じろという期待じゃないのかい」と助言。そこから仲蔵は、悩みに悩んで苦労して、これまでにない工夫をした自分の定九郎を作り出した。いざ本番を演じてみると、お客の反応が薄い。実は、観客は、仲蔵演じるこれまで見たことのない斬新な定九郎に呆気にとられ、唸ることしかできなかったのだ。そんなこととは知らず、意気消沈して家に返った仲蔵は「上方に修業に出る」とお岸に言って家を出る。歩いていると「仲蔵の定九郎は素晴らしかった!」と話す声を耳にする。「一人でもそんなふうに思ってくれた客がいた!上方へ行く前に女房に伝えよう」と家に戻ることにする。その途中で、師匠の中村伝九郎に呼び止められ「昨日の芝居はよかった」と煙草入れをもらう。家に戻った仲蔵は、褒められたことをお岸に話し、礼を言う。「なんだい、おまえさん。しくじったと言ってたのに拝んだりして、煙に巻かれるようだ」と言うお岸に仲蔵が「あぁ、もらったのは煙草入れだった」でサゲ。

八代目正蔵さんの、仲蔵が苦労して生み出した定九郎を演じるくだりの語り口、仕草が最高にかっこいい!しびれた!こんな講談みたいな落語もあるんだな。なんにしても!仲蔵演じた定九郎が現在の定九郎の型になっているというのだから、一度、歌舞伎「忠臣蔵」の五段目を見なくては!フガフガ!

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